がんの悩み・苦しさ
がんになると、うつ病にかかることが少なくありません。
ある調査によれば、がん患者の15~25%がうつ病にかかると言われています。
この話を聞いて、「なぜ体の病気なのに心の病気(うつ病)になるの?」と思われた方もおられるかもしれません。
うつ病はストレス病とも言われ、過度なストレス(悩み、心配事)があると誰でもかかりうる病気の一つです。
がんは過度なストレスです。
“がん”は人の生死に関わる大きな病気だからです。
医学が進んだと言っても未だに周りではがんで亡くなる方も珍しくありません。
またその治療には時間も費用もかかります。がんになって色々な制限ができたり、諦めなければならないことができたりして、これまでとは生活が全く変わってしまったという方もおられるでしょう。
がんの疑いから診断、治療、療養生活といったあらゆる時期に家族のこと、仕事のこと、生活のこと、自分があとどれくらい生きられるのかなど色々なことを悩み、不安を抱くかもしれません。
うつ病の症状
からだへの現れ方の例 | こころへの現れ方の例 |
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もし症状が次の3点のいずれかに当てはまる場合は、主治医にご相談ください。
- 症状の程度があまりに強く、苦しくて生活に支障がでている
- 症状が現れ始めて2週間過ぎても、程度が弱まることなく依然として強い
- 症状が現れ始めて2週間過ぎても、日を追うごとに症状の強さが強まっていく
都市から離れた場所で暮らす特有の悩み
当院の近隣にお住まいの患者様にとっては、都市から離れ、高齢でお子さんと離れて暮らしている方も多く、たとえ高度な治療を受けたくても、その病院が遠方であったり、交通手段がなかったり、費用が高額になったり、生まれ育った土地を離れがたい、子どもとの途中同居の問題などといった事情から納得できる治療を受けることができないという方も少なくないのではないでしょうか。
大切なことは、まずはがんという病気になった時、自分自身が「うつ病」になりやすい状況に置かれていることを理解することです。
そして、もし症状が生活に支障が出るほどに強くなった場合は、できるだけ早く、主治医や看護師、がん相談窓口に相談することです。
悩み・苦しさの負担を軽くするために本人ができること
うつ病の症状を見ると、どれも珍しい症状ではなく、誰でも経験したことがあるものが多いことに気づきます。
実は、がんのことを考えると、誰でも“からだ”や“こころ”にうつ病の症状と似たものが起こってきます。
これは人間として自然な反応です。通常は、時間が経つにつれて和らいでいきます。
一方、うつ病は、症状が和らぐことなく、つらい状態が何週間も続きます。
悩みを和らげるために自分でできることがあります。
できること | 気持ちの現れ | そのために最初にすること |
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家族や友人など身近な人に気持ちを話すこと | 信頼できる方に思いを話すことで、気持ちが整理され、落ち着いてきます。 | |
自分の病気の知識を得ること |
病気について誤解していたり、よく知らないと不安ばかりが募ったり、世間の噂などに振り回されてしまいがちです。 正しい知識をもち、できるだけ先を見通すことが大切です。 |
主治医に相談する。 本ページの「がん情報ガイド」を利用すること(より信頼のおける情報サイトをご紹介しています) その他、書籍や雑誌を利用すること (不確かな情報のものもあり、主治医やがん相談窓口に紹介してもらうのも方法です) |
病院にいる専門家へ相談すること |
自分や家族だけでは分からないこと、話せないことなどの限界があります。 そのような時には専門家を利用しましょう。 あなたやご家族の助けになってくれるはずです。 |
主治医に相談する(必要に応じて院内の専門家を紹介してくれます) 六日市病院「地域医療介護連携室」のがん相談窓口を利用する 近くのがん診療病院 (益田圏域であれば「益田赤十字病院」)の「相談支援センター」を利用する |
がんサロンなど患者会へ参加すること | 患者会・がんサロンとはがん患者同士の支え合いの場です。 同じ病気を持つ患者や家族が集まり、互いに体験を語り合ったり、情報交換をしたり、活動をしたりします。 他にも、「がんのピアサポーター」というものがあります。 これは、がんの治療体験者が研修を受け、正しい知識を身につけて同じ立場でがん患者さんをサポートするといったものです。詳しくは「NPO法人ミーネット」まで。 |
島根県には県内各地にがんサロンが設置されています。 吉賀町には「ゆめサロン」というがんサロンがあります。 |
大切なことは、あなたを支える人や制度が周りにあることを知り活用することです。
大きな悩みの解決には、あなたや家族だけでなく、それ以外の多くの人の協力を必要とします。
家族が本人のためにできる6つのこと
患者本人だけでなく、家族自身もがんに悩んでいる
当然ながら、患者本人ががんに悩むだけでなく、その家族自身も悩みを抱きます。
しかし、このことは周りから見落とされがちであったり、「本人が一番つらいのだから家族がしっかりないと」と家族が人に悩みを言いだしにくい場合もあります。
患者本人が悩みを話す相手として家族が多いでしょう。
家族はその悩みをどう受け取って良いのか、どう答え、どう声をかけて良いのか分からないこともあるでしょう。
家族自身もがんという現実を受け取りきれていない場合もあるかもしれません。
ご家族が抱きやすい悩みの例
- 患者の身の回りの世話を誰がするのか
- 患者のやっていた家族内の役割を誰が代わるか 例)父親や母親としての役割など
- 治療費などの経済的な負担
本人を支える家族のための6カ条
悩み・苦しさの負担を軽くするために本人ができること”は患者本人だけでなく、ご家族も参考にし、家族自身も支えてくれる人を作りましょう。
その上で、家族は次の6カ条を実践なさることをお勧めします。
- がんの知識を得ること
- 家族としての自分にどのような役割が出来るのか考える
例えば、本人の代わりに買い物や送り迎えをする、本人の話を聴くなど - 本人のつらい気持ちを表す言動は日によって異なったり、繰り返したりしうることを理解すること
- 本人の要望をよく聞く
例えば、「がんばってね」とさらに励ますのではなく、「がんばってるね」「すごいね」と相手のがんばりを認め、ねぎらう。また、アドバイスは後回しにするくらいに考えて、まずは相手の気持ちをしっかりと聞き、理解すること。 - 本人の要望に沿った援助になっているのか常に確認すること
例えば、本人にとって快適な援助になっているのか?過剰な援助になっていないか? - 家族も自分の生活を大事にする
時には自分のための楽しい時間を作り、エネルギーを充電しましょう。例えば、おしゃべりやカラオケ、運動、買い物、音楽鑑賞など。
参考:『社会とがんシリーズ 家族ががんになったとき』(一部改変)
参考資料
- 『患者必携 がんになったら手にとるガイド』国立がん研究センターがん対策情報センター(2011).学研
- 『社会とがんシリーズ 家族ががんになったとき』国立がん研究センターがん対策情報センター(2007)
- 『がんと療養シリーズ がんと心』国立がん研究センターがん対策情報センター(2007)